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2011年11月17日 (木)

紅葉(3)

急、というほどでもないが、つづら折りの狭い道を登り続け、やっとのことで八丁峠の長いトンネルに入った

まっすぐなトンネルで、出口が小さく見えている
照明はない
路面はガタガタで、途中で行き違いのための拡幅部分があるような、素堀の狭いトンネルだ

トンネルの先がやけに明るい
出口の先は谷底だろう

もし、真っ暗な中、警戒せずにスピードを出せば、
落差100m以上はあろうかという谷にそのままダイブしてしまいかねない、
寂れた峠道によくある不親切な設計だ

でも、こういう素っ気なさによって、掘り上げた当時の苦労がひしひしと伝わってくる

昭和40年代的というか、あのころまでに作られた物には愛想がなかった
余裕がなかったというべきかもしれない
現代のように、とにかく見栄えが良いようにと、細部まで配慮が行き届いた感じはしない
無骨というのか、実用一点張りで、人からどう見られるかは二の次という印象を受ける
当時なりに考えていたのだろうけれど

それを心地よく感じるのは、自分自身の思慮が及ぶ領域が残されているからかもしれない
結局、ペットのようなもので、
自分より劣っている存在を見て、安心するのと変わらないのかもしれない

あぁ、こんな昔に、こんな大変な場所で大変だっただろうねぇ

そんな風に、相手を見下して安心しているのだから卑劣なのかもしれない



トンネルを出ると、そこには素晴らしいパノラマが広がっていた
少なくとも、眼前の嶺々の中の最高峰からの眺めは快感でさえある


Sp1030422
黄色い部分は唐松。向こうは群馬県


八丁峠の標高は1,240mである

トンネルの先は、切り出された杉や桧の丸太が道端に積み上げられた悪路を、谷底目掛けて一気に下る

黄色い唐松が林立する美しい山肌の中、真っ赤な楓が街路樹のように連なる峠道を、信じられないぐらい下り続ける

行き着く先も峠なのに、こんなに下って良いのかと、不安になるほど下り続ける

辿り着くのは、国道299号の志賀坂峠トンネル東口だ
標高は780mとあるから、八丁峠との落差は460mもある
なるほど、下りまくったわけである


トンネルを西に抜ければ、群馬県だ



Sp1030424
下りきった先の、まるで箱庭のような集落

Sp1030428
紅葉屏風に煤けた民家の深い味


恐竜の足跡の前を駆け抜け、広い谷に下り着くと、そこは神流町の集落だ

長らく、急峻な谷筋を走り続けた目に、神流町の広い谷は実に清々しい

左折する国道299号とはここで別れ、右折して国道462号を東進すれば、
やがて神流町の中心地、万場だ

来月、この万場の小学校で、TBSラジオ、安住紳一郎の日曜天国の公開生放送が行われる

しかし、寂れた中心街からは、浮かれた雰囲気はみじんも感じられない



そろそろ日暮れを気にしなければならない

立派な木造の商店建築が連なりながらも、寂れてしまった中心街を東に走り抜ける

道の駅万葉に立ち寄ると、途中で目に入った立派な味噌醸造蔵元の味噌を売っていた
見るからに素朴なもろみを安く売っていたので、一年物の味噌と合わせて買い求めた

県道71号線に右折し、土坂峠を抜ける
唐松の彩りは目に入るものの、この辺りとしては珍しく、今ひとつ面白みのない峠道だった


Sp1030429
土坂越えは少し陰鬱な印象だった

交通量は極めて少ないが、道路はよく整備されていて走りやすかった
ただ、退屈で距離を感じる道だった

吉田町から、小鹿野町の国道299号に出ると、寒さは一気に緩み、空気は街の暖かさに変わっていた




今年は暖かい日が続き、紅葉は遅いと聞いていたが、
さすがに1,000m級の山の紅葉には遅きに逸した感があった


今回は神流町から国道462号を東進して戻ってきたが、これを逆に西進すれば、日航機事故の最寄りの集落である上野村に至る

上野村から、県道45号線を北上して塩ノ沢峠を越え、南牧村から県道93号線を西進すると、田口峠を経て信州佐久に抜けられる

塩ノ沢峠や田口峠の辺りは、全山が唐松林で、見渡す限り真っ黄色に紅葉する

殆ど誰も見に行かないが、それは非常に美しい



私は誰も幸せにすることができなかった、世界と了見の狭い男だが、
つき合っていれば、こういう風景を見せてあげることはできた

それに価値を見いだすかどうかは、受け取る側の捉え方次第だが、
きっと、価値を感じる人間など、この世に一人もいないのだろう



久し振りに長距離をこなした機関は、走り始めとは別人格のように一際スムーズになっていた
満タンにしたタンクは、残り1メーターにまで減り、トリップは216kmを刻んでいた


正丸トンネルを抜けると、すっかり暗闇になり、風が冷たかった
エンジンの振動と運転の疲れで痺れた体に、熱い広東麺がとても美味かった

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