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2011年1月22日 (土)

ヨイトマケの唄

ご存知だろうか?

私は知らなかった

未だ丸山という姓だった頃の、古い、美輪明宏の歌である


私がこの歌を知ったのは、桑田佳祐の二枚組アルバム「TOP OF THE POPS」である
様々な色合いの曲が収録されたこのアルバムの中で、
唯一のライブ音源が、この、ヨイトマケの唄だ

トラックを再生すると、静寂が広がる
"何を唄ってくれるんだろう?"
そういう期待に静まりかえる会場がそこにある
時折、桑田へのコールが響く中、
演奏が静かに始まる

会場の聴衆のきっと多くが、初めて聴く歌だったと思う



今も聞こえるヨイトマケの唄 今も聞こえるあの子守歌
工事現場の昼休み 煙草ふかして目を閉じりゃ
聞こえてくるよ あの唄が
働くドカタのあの唄が 貧しいドカタのあの唄が

子供の頃に小学校で ヨイトマケの子供汚い子供と
いじめ抜かれて囃されて 悔し涙に暮れながら
泣いて帰った道すがら
母ちゃんの働くとこを見た
 母ちゃんの働くとこを見た

姉さんかぶりで
泥にまみれて 日に灼けながら汗を流して
男に混じって綱を引き 天に向かって声あげて
力の限り唄ってた
母ちゃんの働くとこを見た
 母ちゃんの働くとこを見た

慰めてもらおう 抱いてもらおうと 息を弾ませ帰ってはきたが
母ちゃんの姿見た時に 泣いた涙も忘れ果て
帰っていったよ学校へ
勉強するよと云いながら
 勉強するよと云いながら

あれから何年経ったことだろう 高校も出たし大学も出た
今じゃ機械の世の中で おまけに僕はエンジニア
苦労苦労で死んでった
母ちゃん見てくれこの姿
 母ちゃん見てくれこの姿

何度か僕もぐれかけたけど ヤクザな道は踏まずに済んだ
どんな綺麗な歌よりも どんな綺麗な声よりも
僕を励まし慰めた
母ちゃんの唄こそ世界一
 母ちゃんの歌こそ世界一

今も聞こえる ヨイトマケの唄
今も聞こえる あの子守歌


(作詞・作曲・唄:丸山明宏/桑田佳祐「TOP OF THE POPS」より)

この歌は、凄い歌だから、心して聞いてほしい
そんな想いが、一音目から伝わってくるかのような演奏だ
その、心のこもった演奏と桑田の声が、会場の期待の中へと染み込んでいく
聴衆も、それが伝わっているかのように、しんと静まりかえって聴いている

あるいは、桑田に、演奏に、聴き慣れない凄い歌に、圧倒されていたのかもしれない


この歌を聴いて、私は参ってしまった
もう、大泣きである
母への愛に溢れる歌詞

どんどん盛り上がっていく演奏
みんなの心に届けとばかりに張り上げる桑田の渋く伸びやかな声
私がパシフィコ横浜で直接聴いていたら、放心状態になっていただろう


母を亡くして日が浅いから、ということではない
この歌を聴いたのは、母が死ぬはるか前である
この感激は、自分自身の記憶と共感しての物ではない
桑田と、演奏しているミュージシャンが抱くこの歌への愛と
この歌の持つ凄さを強く感じてのものであり
圧倒されているであろう聴衆の心の震えを感じてのものだ

こういう唄を、泣くこともなく唄える歌手は凄いと思う
前回の記事で取り上げた古内東子もそうだが、
なんであんなに切ない歌を泣かずに唄えるのか

あるいは、泣いているのだろうか
心で泣いても、それが声に影響しない訓練を積んでいるのだろうか
まぁ、どっちにしろ唄えないと仕事にならないんだから当たり前か


この音源自体がすでに再録で、初録は「すべての歌に懺悔しな」である
しかし、このアルバムは持っていない
買おうと思ったこともあったが、あまり評判が良くないので買い控えている

美輪明宏のオリジナルが欲しくなって、古いドーナツ盤レコードをオークションで競り落とした
聞いてみて、いささかがっかりした
大抵のカバー曲は、オリジナルのほうが良いといわれる
でも、美輪明宏のオリジナルを知らなかった私にとって、
ヨイトマケの唄のオリジナルは、桑田佳祐のライブ音源になってしまった
美輪明宏のオリジナルは、そのカバーとしてしか聞こえないのだ
美輪明宏は、この歌をさっぱりさらりと唄っている
心の震えがそのまま歌声になっているかのような桑田の声と違って
美輪さんのドーナツ盤は、台詞を読んでいるかのような淡白さだ
オリジナルには敬意を表すべきだと思う
それでも、私にとっては、桑田佳祐のこのライブ音源こそが、「ヨイトマケの唄」だ



ヨイトマケの唄は、一時期、放送禁止になっていたそうだ
差別的表現、
貧しく汚いヨイトマケの子供がいじめられる表現が引っ掛かったのだろうか
こんなに良い歌なのに


実は、美輪明宏自体、あまり好きな人ではなかった
が、こんな愛溢れる歌を作詞作曲していたということを知って
見方は変えようと思った

まぁ、それでも好きではないのだけれど

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