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2010年11月 8日 (月)

夜行バスとその車窓

以前のエントリに書いたように、大学進学には苦労した

浪人中は、和歌山の家や大阪の親戚への旅行もお預けだった
家族が留守の間、一人で受験勉強である
勉強の仕方さえ知らない人間が、そんなことしても知れている
でも、自粛したほうが居心地が良かった
だから、浪人していた3年間、どこにも行かなかった
ハタチ前後の3年間、こんな不毛な過ごし方をしたことを、
今になって後悔してももう遅い

もう、遅いんや・・・・

高田馬場で過ごした2年に決別しようと、3年目は八王子で学んだ
それまで、模試でも手応えを全く感じることはなく、いつも結果はE判定だった
なのに、その年度の最初の模試で、いきなり全てA判定になった
早い時期にこんな結果が出ると、それはそれで不安になるものだ
その不安に押し潰されそうになりながら、秋の空を見上げていたのだ

そんな人間でも、なんとか大学に合格し、晴れて謹慎の解けた春休み
まずやったことは、和歌山への旅行だった

もちろん、春先だから海には入れない
道程を楽しみに行ったのだ

それまでは、高速道路をひた走ったり、晴海埠頭から勝浦までフェリーに乗船したり、
新幹線で大阪廻りというものだった
いずれも家族旅行で、勝手気ままな旅ではなかったから
一人で、好きなように旅してみたいと思っていた

そして、名古屋廻りのルートを辿ってみようと思っていた

時刻表というものを初めて買って、名古屋廻りで和歌山の家までたどり着くダイヤを調べると、
名古屋を8時頃に出発する特急列車に乗らなければならないことがわかった
東京都民にとって、名古屋に8時は、新幹線ではムリである

この時、時刻表で見つけたのが、夜行バスである

JRの「ドリームとよた」というバスが、東京駅八重洲口から、たしか22時半頃に出ていた
名古屋に朝の6時半頃到着。駅で朝食を摂るのにちょうどいい接続時間だった
なんと言っても、その当時から、料金が6000円とか7000円程度と安く、
当時発売されていた「南近畿ワイド周遊券」が利用できるというジャストフィットさ

即決である

バスは2階建てで、座席はその2階だった
夜行専用バスらしく、両窓際と、真ん中に座席を持つ、3列シートという構成だった
身長176cm、体重82kgのデブには決して広いとは言えなかったが、
その独立性は心地よかった

3月2日の寒い夜、バスは静かに走り出した
インフォメーションのVTRが終わると、早くも車内の照明は最小限に絞られ、
車内は夜行バスの持つ独特の世界に包み込まれた

「ドリームとよた」は東名高速を走る

時間は夜の11時に迫っているから、車窓は既に夜の帳である
大田区の住宅密集地から川崎、神奈川を抜ける
幾つかのインターチェンジはどれも水銀の白い灯りに照らされ、植込みの芝生が美しい
高架橋の継ぎ目を乗り越す軽い衝撃音が、イヤホンから流れる音楽サービスに混じる

日大病院のネオン看板が見えるころ
街の灯りはだんだん乏しくなっていく
2階建てバスの2階からは、遮音壁の向こうが見渡せて
そこには、家々の明かりや街灯が、地形に沿って点々と光っている
夜のバスから見える街の灯りは、何故か胸に染み込むように切なかった

トンネルのオレンジ色の照明が、規則正しく流れていく
追い越していくトラックのエンジン音
追い越したトラックが左ウインカーを出すと、バスはヘッドライトを切る
トラックはそれを合図に、
バスの直前に入り、ハザードランプを数度ともして、ゆっくりと遠ざかっていく
静岡ICでの乗務員の交代
三ヶ日ICでの小休止
一つ一つの光景が、どれもドラマチックで、どことなく切なかった


この感覚はなんだろう?
楽しい旅行に切なくなる要素など何もないはずなのに・・・・

見る側の心理などよそに、この心の琴線に響く風景だったということだろうか?


あの、
静かで、儚い、夜行バスの夜の車窓が好きだ



あの車窓と、あの感覚を味わいたくて、その後も、夜行バスは何度も利用した
「ドリームとよた」の他にも、「ドリームなごや」や、伊勢神宮までのバスも使った
最後に使ったのは、いつのことだっただろう?
自分で6輪ものタイヤを持つに至ると、なかなかバスを使うこともないものだ

暫く利用しないうちに、バスはどんどん便利になって、
今は新宿や八重洲まで行かなくても、近所から各地へ向かう夜行バスが運行されるようになった

またいつか、あの儚い車窓を見に行きたい

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